経理の仕事はなくなる?将来性や自動化の可能性がある業務を解説
公開日: 2023年11月20日
更新日: 2024年11月13日
経理は企業のお金を管理する部門で、どの業界・業種にも欠かせないポジションです。しかし、AIやITツールの普及で、経理の仕事がなくなると不安に思うかもしれません。
本記事では経理の仕事はなくなるのか、AIを活用して自動化が期待できる業務を解説します。また、経理として今後も活躍し続けるためのポイントも紹介しているので、参考にしてください。
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経理の仕事は今後なくなるのか
結論、経理の仕事は今後もなくなることは無いでしょう。また、将来性もあるので不安に思う必要はありません。
たしかに、ロボットが得意な事務的な作業は今後なくなる可能性はあります。しかし、経理業務のなかには人間にしかできない作業もあるので、経理職を完全に廃止するのは考えられません。
AIが直接的に仕事を奪うのではありません。AIを使いこなせる人間が、AIを使えない人間の仕事を奪うと考えています。
なぜ経理がなくなると言われるのか
経理はどの会社にも設けられている部署ですが「経理がなくなる」と心配されるようになったのはなぜでしょうか。その理由や背景を2つ紹介します。
- AI・RPAの進歩
- ペーパーレス化による負担の減少
AI・RPAの進歩
AIやRPAを活用すると、経理業務の一部を自動化できるので「人間の力が必要無いのでは」と心配されるのでしょう。
RPAとは「ロボティック・プロセス・オートメーション」の略で、これまで人間しか対応できないと考えられていた作業を代わりに行おうとするツールです。
経理業務は正確性が求められる業務のため、基本的にミスは許されません。1円でも誤差が生じると、大きなトラブルにつながる恐れもあります。
ただし、定型的な作業も多く、自動化が可能な業務はむしろロボットのほうが得意です。そのため、RPAを導入して業務を効率化させる企業も増えています。
ペーパーレス化による負担の減少
紙の使用を削減するために、経理業務でもデジタル化が推進されています。データをデジタルで管理できるようになると、下記の業務の人的負担を軽減できます。
- 印刷
- 郵送
- ファイリング
業務を削減できると、人件費を抑えるために経理の人材を減らすかもしれません。
また、画面上に入力すると文章の整合性をチェックしやすく、データを検索する時間も削減できます。他にも、領収書や請求書のデータを自動で取り込むシステムも普及しているので、紙で記入・提出していた時間の削減も期待できます。
AIの普及でなくなる可能性のある経理業務
AIやシステムを導入すると、今後なくなる可能性のある経理業務は下記の4つです。
- 仕訳入力
- 経費精算
- 請求書の発行
- 経理への問い合わせ対応
それぞれの業務内容と、なくなる可能性がある理由を解説します。
仕訳入力
ツールのなかには、自動で勘定科目を分類してくれるシステムもあります。これまで基本的に仕訳入力の業務は、会計ソフトや表計算ツールで行われていました。
手入力ではどうしても入力ミスが発生するのが課題でしたが、AIを活用すると正確性とスピードは格段に向上するでしょう。事前に仕訳ルールを設定する必要はありますが、仕訳入力は自動化しやすい業務の一つです。
経費精算
経費精算の業務も、AIやRPA技術を導入すると自動化が可能です。
通常、経費や交通費、出張費などは帳簿に記載して経理部門が精算手続きを行うのが一般的な流れです。しかし、システムを導入することで領収書やレシートを撮影すると自動でデータが反映されたり、必要事項を読み込めたりします。
他にも交通費は一つひとつのルートが適切かチェックしていましたが、ICカードと連携すると簡単にデータを参照できるため、確認の手間が省けます。
AIシステムを導入すると、経費精算業務も簡略化されていくでしょう。
請求書の発行
請求書の発行業務は会計システムから請求書をダウンロードして処理を行い、各社ごとの規定フォーマットに合わせて作成・印刷をして郵送するまでが一般的な流れです。
しかし、大量の請求書を発行する会社が、上記の作業をすべて手作業で行うのはかなりの手間です。
もしも、請求書の作成・発行業務に会計システムを導入すると、ある程度は自動化できます。また、印刷して封入し郵便局へ発送する業務も、アウトソーシングすれば人の手はほとんど必要なくなります。
経理への問い合わせ対応
チャットボットを利用するとロボットが問い合わせ対応をしてくれるので、経理担当者の負担が軽減されます。職員が一つひとつに対応していると時間がかかり、とくに繁忙期になると返答する余裕もなくなるでしょう。
AIが導入されていれば定型的な内容以外も対応できるため、人間がサポートしているときと同じような返答が期待できます。また、過去のデータが反映されるため利用されるほど精度が高まるのが特徴です。
電話やメールでは対応時間が限られていますが、チャットボットは無人でサポートできるのも魅力です。複雑な内容は人間が対応すべきですが、問い合わせが多い内容はロボットに任せるとよいでしょう。
なくなる可能性が低い経理業務
どれだけAIが普及しても、下記の業務は人間の力が求められます。
- 突発的・イレギュラーな作業
- 最終の確認作業
- 課題やデータの分析
今後もなくなる可能性が低い経理業務を確認しましょう。
突発的・イレギュラーな作業
テンプレート化されていない、いわばイレギュラーな事案はAIでは対応しきれません。たとえば、下記のような業務は人間が行う必要があるでしょう。
- 特殊な仕訳
- 新しい基準での会計処理
- 毎年改正される税法への対応
他にも、紙での対応が求められる業務はデジタルには関与できません。ペーパーレス化が推進されているとはいえ、紙で提出・保存が求められる業務はまだまだ存在しています。
最終の確認作業
定型業務はロボットを活用すれば自動化ができますが、やはり最終の確認は人間がする必要があります。AIの精度が高まっているとはいえ、100%ではありません。
AIを利用して業務の負担を軽減し、最終的な確認はきっちりと行うのがAIを上手に活用する方法です。
課題やデータの分析
予算の編成や管理はAIでもできます。ただし、予算と実績に差が生じた原因をAIに分析させるのは難しいでしょう。
なぜなら、原因を解明するのが難しい出来事には、人間の知識や経験のほうが活きるからです。どれだけAIが発達しようとも、データ分析業務はなくなる可能性は低いと推測できます。
経理として今後も活躍するには?
l経理の仕事が完全になくなることはありませんが、AIを活用すると業務の負担を軽減できるため、人員削減の可能性は大いに考えられます。
経理として活躍し続けるためのポイントを、4つ紹介します。
- ITに強くなる
- コミュニケーション能力を高める
- 会計・財務の知識を習得する
- 専門性の高い知識を身につける
ITに強くなる
AIやRPAが導入されている企業であれば、使いこなさなければいけません。加えて各種ツールの理解を深めると、作業の精度を高めたり、さらなる業務の効率化を目指せたりします。
また、ITリテラシーを高めるのもおすすめです。ITリテラシーとは、ITに関する知識を習得し使いこなせる力を指します。
デジタルに頼る機会が増えているからこそ、情報の取り扱いやセキュリティ対策などの知識がある人材は、社内でも重宝されるでしょう。
コミュニケーション能力を高める
経理部門はひたすら数字やパソコンと向き合う業務のように感じますが、他部門と連携をとる機会も多くあります。コミュニケーションが苦手な方は、他の職員とうまくやりとりができず業務が滞るかもしれません。
また、報告書の内容や数字から読み取れる情報を上層部に伝えるのも業務の一つです。相手にわかりやすく説明できなければ、スムーズに伝えられません。
相手が求めていることを理解して的確に伝えられる能力は、経理業務でも有効です。
会計・財務の知識を習得する
経理は簿記や会計の知識がなくてもできる業務もありますが、知識があると仕事への理解も深まります。なんとなく仕事をこなすよりも、理解力がある人材のほうが評価は高いでしょう。
とくに、日商簿記や税理士、FPなどの資格の知識は経理業務に有効です。資格試験の概要を掲載するので、気になる方はチェックしてください。
日商簿記3・2級の概要 | |||||
---|---|---|---|---|---|
3級 | 2級 | ||||
試験時期 | 2月・6月・11月 ※ネット試験は随時実施 | 2月・6月・11月 ※ネット試験は随時実施 | |||
受験資格 | なし | なし | |||
受験料(税込) | 2,850円(税込) | 4,720円(税込) | |||
難易度(直近の合格率) | 34.0%(第164回) | 21.1%(第164回) | |||
勉強時間の目安 | 100~150時間 | 250~350時間 ※3級の知識がある場合 |
税理士試験の概要 | ||
---|---|---|
試験時期 | 8月 | |
受験資格 | 学識・資格・職歴による受験資格のいずれかを満たす ※簿記論・財務諸表論は誰でも受験が可能 |
|
受験料(税込) | 4,000~1万円 (科目数によって異なる) |
|
難易度(直近の合格率) | 19.5%(令和4年度) | |
勉強時間の目安 | 5,000~10,000時間 |
ファイナンシャル・プランニング(FP)技能検定の概要 | |||
---|---|---|---|
3級 | 2級 | 1級 | |
試験時期 | 1・5・9月 | 1・5・9月 | 学科:1・5・9月 実技:2・6・9月 |
受験資格 |
FP業務に従事している者 |
3級技能検定の合格者など |
学科:2級技能検定合格で、FP業務に関し1年以上の実務経験を有する者など |
受験料 (非課税) |
学科:4,000円 実技:4,000円 |
学科:5,700円 実技:6,000円 |
学科:8,900円 実技:28,000円 |
難易度 (直近の合格率) |
学科:56.00% 実技:50.95% |
学科:29.07% 実技:35.14% |
学科:10.38% 実技:86.07% |
勉強時間の目安 | 80~150時間 | 150~300時間 | 600時間 |
他にも、未経験者向けからキャリアアップを目指す方まで、経理職の方におすすめの資格は下記の記事で紹介しています。ぜひ参考にしてください。
【関連記事】経理の資格おすすめ21選!未経験・簿記以外で役立つ資格一覧
また、財務の知識をもつ人材も価値が高いといえます。たとえば、決算書を読み解き、客観的な立場で経営者に提言できる能力は貴重です。
経理以外の知識・スキルがあれば将来の選択肢も増えます。経理人材のキャリアアップについては、こちらの記事で解説しているため、あわせてご参照ください。
【関連記事】経理職のキャリアプランは何がある?代表的なキャリアパスを解説
専門性の高い知識を身につける
経理担当者として価値を高めるためには、業務以外にも専門性の高い知識を身につけると存在感を発揮できるでしょう。たとえば、すでに紹介した会計や財務の知識以外にもM&Aや税務関連の知識が挙げられます。
また、海外と取引のある会社だと語学スキルも武器となります。
経理がなくなることはないがスキルアップは重要
AIの普及により経理がなくなると心配する声もありますが、完全になくなることはありません。イレギュラーな業務や最終の確認作業は人間の力が必要です。
ただし、定型業務はデジタルを活用して自動化が進むと予測できるため、人員削減は考えられます。ITや会計の知識・スキルを磨くと、今後も活躍できる経理人材となるでしょう。
とくに税理士や公認会計士の資格の知識は現場でも活用でき、資格を保有しているだけでも価値はあります。経理職からさらにキャリアアップを目指す方は、検討してみてください。
ウィズ総合事務所グループは税理士・社労士等の士業資格や簿記等の経理系の資格取得を目指している方を積極的に採用しています。
当事務所では資格取得に向けて全国でもトップクラスの支援制度を設けています。
一定の要件はありますが、教材費は事業者が全額負担しますし、最大2ヶ月間試験勉強に専念できる制度があります。
また、平常時においても1日6時間、週30時間を標準勤務時間としており、勉強、家庭、仕事のバランスがとりやすいように配慮しています。
働きながら勉強することは資格勉強にも相乗効果を生みます。
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この記事の監修者
ウィズ総合事務所グループ統括代表 山本庸介
- 大阪大学薬学部、同大学院薬学研究科卒業
- 慶応大学経済学部卒業(通信教育課程)
- 大手製薬会社に勤務後、税理士を志す
- 2021年7月に大野市で山本総合会計事務所を開業
- 2023年9月に税理士法人ウィズ総合事務所を設立
税理士試験に2年で5科目合格(簿財消相法)。開業2年でグループ売上1億円に達する。
従業員が資格を取得しやすい制度・環境を構築し、本事務所を運営。事業者のお客様に対しては、本業に集中できるよう、「事務代行屋」として支援を行う。
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