税理士登録に必要なこと|実務経験や登録費用・書類、面接、スケジュールを解説
公開日: 2023年10月16日
更新日: 2024年10月22日
税理士を目指して資格取得を考えているものの、合格後の手続きや試験合格以外の登録要件についてわからない方も多いのではないでしょうか。
税理士としての独占業務に携わるには、税理士試験に合格するだけでは不十分です。
税理士の試験に合格したあとは、税理士会への登録が必要です。通常、登録には「税理士資格の取得」および「2年以上の実務経験」の要件を満たすことが求められます。この記事では、税理士登録に関する条件や必要書類、費用、スケジュールを詳しく説明します。
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税理士登録の要件
税理士試験に合格した者や試験が免除された者は、通算2年以上の実務経験を積まなければ税理士の資格を取得できません。税理士になるためには、まず税理士試験に合格し、その後2年以上の実務経験を積み、最終的に税理士名簿に登録する必要があります。
ただし、公認会計士や弁護士の資格を保有している場合、実務経験は必要ありません。
税理士試験が免除される場合
一定期間税務署で勤務していた場合や、弁護士または公認会計士の資格を持っている場合、税理士試験は免除されることがあります。ただし、これらの条件に当てはまる場合であっても、税理士を名乗るためには税理士登録の各ステップが必要です。
税理士試験が免除されるケースについて解説します。
税務署にて一定期間勤務すると、勤続年数により試験の科目免除
国税専門官として勤務すると、勤務年数に応じて税理士試験の免除が受けられます。
- 勤務年数10年以上:税法3科目の試験が免除される
- 勤務年数23年以上:会計学、税法の全試験科目が免除される
弁護士または公認会計士の資格を有していると、試験の全科目免除
公認会計士および弁護士の資格を所有する人は、税理士試験を受験、合格しなくても税理士として登録できます。
税理士試験は免除になるものの、実務補修で税務に関する研修を修了することが条件です。
公認会計士になるためには、公認会計士試験合格後、原則3年の実務補修を受ける必要があります。科目は、「会計」「監査」「経営」「税務」「コンピュータ」「倫理」の6種類です。税理士として登録するためには、公認会計士の実務補修の「税務」の部分を追加でより深く学習し、税理士として通用する税務の知識を身につけることが求められます。
税理士登録のための実務経験
税理士になる資格に加え、2年以上の実務経験が必要です。どういった経験が実務経験として含まれるのか解説します。
実務経験として認められる業務
税理士法施行令では、実務経験期間に含まれる業務は「貸借対照勘定および損益勘定を設けて経理する会計に関する事務」と定められています。必ずしも正社員で働いている必要はなく、会計事務所や税理士法人でパート・アルバイトなど非正規雇用で勤務した経験もカウントできます。
認められる業務内容の例:
- 簿記上の取引について、取引仕訳を行う
- 仕訳帳などから各勘定へ転記する
- 元帳を整理し、日計表もしくは月計表を作成して、その記録が正しいか判断する
- 財務諸表の作成に関係する業務
- 決算手続に関する業務
実務経験として認められない業務
簿記会計の専門知識を活かした業務でないと、実務経験には含まれません。
会計事務所や企業の経理部門で働いていたとしても、簿記会計の知識がなくてもできる作業や、電卓を用いた単純な経費入出力などは、実務経験としてカウントされません。原則として、残業時間(時間外勤務)で働いた分も除外されます。
関連記事:税理士登録に必要な実務経験はどこで積む?登録要件と証明方法も解説
税理士登録に必要な実務経験2年の計算方法
税理士登録には「2年以上の実務経験」が必要ですが、実務経験の期間について誤って解釈すると、税理士登録に遅延が生じるおそれがあります。実務経験の期間の計算方法について、正確に理解しておくことが重要です。
同一の勤務先である必要はない
2年以上の実務経験は、同じ勤務先で積む必要はなく、実務経験の期間がトータル2年で認められます。ただし、計算期間に含むすべての勤務先で、「在職証明書」を用意してもらう必要があります。
本来、在職証明書には「勤務先における業務内容と勤務期間を証明する書類」としての意味しかありません。しかし、発行には勤務先の代表者の署名が必要であるため「勤務先から税理士登録の許可を得るための書類」ととらえられがちです。
とくに税理士事務所が、職員の独立開業による退職を防ぐために、職場が在職証明書を出し渋るトラブルも起こりえます。職場の代表者に在職証明書を作成してもらえない場合は、同勤者に証明してもらうことも可能です。
税理士試験合格前の勤務期間も含まれる
試験合格前の勤務経験も、実務経験としてカウントできます。
試験に合格したあと、ゼロから実務経験を積む人は比較的少数派です。実務経験を積みながら試験勉強をするケースがほとんどです。
2年ちょうどでの申請は受理されにくい
実務経験の期間は、余裕を持って申請すると安心です。2年ちょうど経ったと思って申請しても、審査の結果一部の勤務時間が認められず、弾かれるリスクがあります。
実務経験の積上げ計算をする際は、2年に満たない期間で2年相当の勤務時間が積み上がることを防ぐために、時間外勤務や休日勤務の時間を実務経験に含められない決まりになっています。
税理士登録の必要書類
税理士登録の申請での最初の手順は、資料提出です。提出先は、税理士として業務を行う予定の地域の税理士会です。ここでは、実務経験を証明する書類をはじめ、税理士登録の必要書類について解説します。
実務経験を証明する書類
計算期間に含むすべての勤務先で、「在職証明書」が必要なほか、正規雇用の場合と非正規雇用の場合とでそれぞれ追加の必要書類があります。
正規雇用として勤務していた場合
一般企業の場合は、在籍証明書とあわせて「職務概要説明書」を提出します。従事していた職務内容、業務における経理業務の割合などを記載し、勤務先の代表者の署名捺印が必要です。
税理士会連合の手引きには、とくにフォーマットは記されておらず、「形式は任意」となっています。近畿税理士会の手引きを参照すると、以下の内容を書くよう記載があります。
職務概要説明書に記載する内容:
- タイトルは「職務内容説明書」
- 宛名は「近畿税理士会長殿」(所属する税理士会に合わせて変える)
- 申請者氏名
- 在職時の所属部署
- 日々、月末、期末等の職務内容(会計業務以外の業務がある場合、それも記載)
- 勤務時間
- 会計業務とその他の業務の従事割合(割合は必ず明記)
- 代表者に「上記相違無い」旨を記入いただく
- 証明日
- 法人名称・代表者の署名
- 押印(印鑑は法人の届出印)
出典:近畿税理士会「税理士登録申請の手引き」
作成して職場の代表から署名をもらってから「この書式はNG」と言われてしまうと、またやりなおす羽目になります。こうならないために、税理士会に事前にチェックしてもらうと安心です。
上記に加えて、所属した企業の組織図も提出する必要があります。
非正規雇用で勤務していた場合
パートやアルバイトなど非正規雇用の場合は、「勤務時間の積み上げ計算書」の提出が求められます。正規雇用の場合とは計算方法が異なり、非正規雇用の場合は在籍期間=経験年数ではないからです。在籍期間にかかわらず、2年相当の勤務時間を獲得していると証明できれば、実務経験2年以上として認められます。
積み上げ計算書は、税理士連合会のホームページにExcelのテンプレートが用意されているため、それに従って作成してください。
積み上げ計算書に加え、積み上げ計算に含まれる期間の源泉徴収票、出勤簿またはタイムカードのコピーも提出します。出勤簿またはタイムカードのコピーには、表紙や1枚目に証明者による「原本と相違無い旨の記入、署名、実印の押印」が必要です。
その他必要な書類
税理士登録に必要な他の書類は、下記の通りです。
- 税理士登録申請書
- 登録免許税領収証書
- 写真
- 本籍の記載されている住民票の写し(マイナンバーが記載されていないもの)
- 登記されていないことの証明書
- 身分証明書(未成年後見人、保佐人、補助人の対象外であることや、破産宣告または破産手続き開始決定の通知を受けていないことを証明する文書)
- 資格を証する書面(「税理士試験合格証書」または「税理士試験免除決定通知書」や「弁護士資格認定通知書」「公認会計士試験合格証書」など)
- 履歴書
- 誓約書
- 業務執行に関する誓約書
- 直近2年分の確定申告書のコピーまたは住民税の課税証明書
参照:日本税理士会連合会「登録に必要な提出書類等」
税理士登録に必要な書類は、日本税理士会連合会のWebサイトからダウンロードできる標準フォーマットだけではありません。勤務先や地方自治体から提供される書類も含まれます。
忙しい平日の間に必要な書類を取得するために、各所へ足を運ぶ必要があるかもしれません。そのため、スケジュールに余裕を持って計画し、準備を進めることが大切です。
税理士登録の費用
税理士会に登録するためには、費用もかかります。初年度で約30万円、年会費として約10万~15万円程度必要です。
大規模な事務所で税理士試験合格者が数多くいる場合、事務所が年会費を負担することもあります。税理士の登録者数だけ維持費用がかかるため、試験に合格したものの実力が伴わない人には登録させない事務所もあります。
全国共通の税理士登録時の費用
登録の際には必要な書類を提出するほか、登録時に費用がかかります。
- 登録免許税 6万円
- 登録手数料 5万円
登録免許税と登録手数料の値段は、全国共通です。
地域の税理士会ごとの会費
「ブロック単位の大きな税理士会の会費」と「支部単位の小さな税理士会の会費」がそれぞれ毎年発生しますが、これらの会費は、登録料などと違って全国一律ではなく、会と支部によって数万円もの差があります。例として東京の価格を紹介します。
ブロック単位の大きな税理士会(例:東京税理士会)
- 入会金 4万円
- 会館建設費 2万円
- 年会費 8万1,000円
支部単位の小さな税理士会(例:渋谷支部)
- 年会費 3万6,000円
年会費は高額ですが、個人で払った場合でも、もともと業務に必要な費用のため経費算入できます。
税理士登録のスケジュール
税理士登録のスケジュール・流れを解説します。
税理士登録の期間に関しては、準備から登録完了までに約3ヶ月程度かかります。
1ヶ月目:書類準備・提出
書類提出が最初のステップです。
書類申請が月末締切のため、それに1日でも遅れてしまうと、次の月末締切になってしまう点に注意してください。
2ヶ月目:面接・審査
申請書類の提出後に、面接日程に関するはがきが送付されます。
面接では、実務経験や開業する地域についての質問があります。「税理士になりたいと思った理由」「現在の業務内容」「将来の展望」など、これまでの経歴や今後の計画に関することを問う内容です。
開業登録を希望する場合、面接調査に加えて事務所の実地調査が行われ、開業予定地の環境や適切さが評価されます。
3ヶ月目:交付式を経て登録完了
審査が完了すると、3ヶ月目の月末に「税理士登録通知」とともに税理士証の交付に関する詳細情報が送られてきます。税理士証票交付式に出席することで、税理士証票や税理士バッジを受け取れるので、必ず出席してください。
税理士会ごとに、新規会員登録を受けた税理士が集まるので、同期の税理士とはじめて顔を合わせる場でもあります。今後のコネクションを作るために、積極的に交流することがおすすめです。
試験合格後は税理士登録の準備を漏れなく進めよう
税理士試験の合格後、税理士に登録するための要件や流れ、費用についてご紹介しました。
- 税理士登録の要件は、「税理士になる資格」+「2年以上の実務経験」
- 正規雇用・非正規雇用の両方の経験において認められるが、実務経験として認められる業務と、認められない業務がある
- 登録には3ヶ月かかり、流れは書類提出→面接→交付式
税理士と名乗れるようになるまでの手順を理解し、余裕を持って準備を進めましょう。
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この記事の監修者
ウィズ総合事務所グループ統括代表 山本庸介
- 大阪大学薬学部、同大学院薬学研究科卒業
- 慶応大学経済学部卒業(通信教育課程)
- 大手製薬会社に勤務後、税理士を志す
- 2021年7月に大野市で山本総合会計事務所を開業
- 2023年9月に税理士法人ウィズ総合事務所を設立
税理士試験に2年で5科目合格(簿財消相法)。開業2年でグループ売上1億円に達する。
従業員が資格を取得しやすい制度・環境を構築し、本事務所を運営。事業者のお客様に対しては、本業に集中できるよう、「事務代行屋」として支援を行う。
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