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税理士科目合格者の市場価値とは?試験の難易度や有効期限を解説

税理士試験には、合格ラインに達した科目はその後の試験で免除になる「科目合格」の制度があります。1科目ずつ着実に合格を目指せるので、働きながら取得を試みる方も多いでしょう。

そんな中、科目合格の市場価値や各科目における難易度について気になる方もいるのではないでしょうか。

本記事では、いくつの科目に合格していたら転職に有利なのか、試験科目の難易度などを解説します。税理士試験に挑もうと考えている方はぜひご覧ください。

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税理士科目合格とは?

税理士試験は11科目中、必修科目や選択科目を含め計5科目に合格すると税理士資格を取得できます。しかし、一度の試験で全科目に合格する必要はありません。

合格ラインに到達した科目は次回以降の試験で免除され、生涯有効です。この制度を科目合格といいます。

1科目だけ合格点を下回ってもすべての科目が不合格とはならないため、着実に取り組めます。働きながらでも計画を立てて合格を目指せる点が税理士試験の魅力です。

税理士試験の科目別の難易度

税理士試験合格を目指す方の中には、科目ごとの難易度が気になる方も多いのではないでしょうか。以下では、年度別の科目合格率を表にまとめました。

年度2022年度2021年度2020年度2019年度2018年度
簿記論23.0%16.5%22.6%17.4%14.8%
財務諸表論14.8%23.9%19.0%18.9%13.4%
所得税法14.1%12.6%12.0%12.8%12.3%
法人税法12.4%12.8%16.1%14.7%11.6%
相続税法14.2%12.8%10.6%11.7%11.8%
消費税法11.4%11.9%12.5%11.9%10.6%
酒税法13.2%12.6%13.9%12.4%12.8%
国税徴収法13.8%13.7%12.2%12.7%10.7%
住民税17.2%12.7%13.9%19.0%13.5%
事業税14.1%12.6%12.2%14.8%11.0%
固定資産税18.4%13.8%18.1%13.7%14.9%
出典:国税庁「税理士試験

合格率が20%を超えているのは簿記論と財務諸表論のみで、他の科目は10%台と難易度が高いことがわかります。

関連記事:税理士の難易度は高い?合格率や科目別の勉強目安時間を紹介

税理士試験の勉強時間

ちなみに税理士試験の勉強時間の目安は、大手予備校のサイトではおよそ3,000~4,000時間だと掲載されていますが、実際に5,000~10,000時間ぐらいはかかるでしょう。

ただし、事前知識の量や実務経験の有無、法学部出身など、人によって背景が異なるため個人差が生じます。

下記の表は、科目ごとの勉強時間の目安をまとめたものです。

科目勉強時間の目安
簿記論500時間
財務諸表論500時間
所得税法1,200時間
法人税法1,200時間
相続税法1,000時間
消費税法600時間
酒税法300時間
国税徴収法300時間
住民税400時間
事業税400時間
固定資産税500時間

大手予備校で発表されている科目ごとの勉強目安時間は、理論暗記の時間は含めずに掲載されています。そのため、理論暗記が必要な税法の科目には、およそ2倍の時間が必要です。

科目の合格率を参考にするのも1つの方法ですが、注意点があります。たとえば、簿記論や財務諸表論は税理士試験を始めて最初に挑戦する人が多いですが、税法科目は科目合格をしてからチャレンジする傾向にあります。

ある程度の知識を持った状態で挑む試験と、知識が浅い状態で挑む試験の合格率を比較することはできません。科目ごとの合格率は参考程度にしてください。

科目合格を採用しているため働きながらでも合格の可能性は十分にありますが、数年に渡って学習するケースがほとんどです。1科目ずつの合格率も低く継続力も必要なため、難易度の高い国家資格の一つだといえます。

関連記事:税理士試験の勉強時間は?学習計画の立て方や勉強のポイントを紹介

税理士科目合格の証明書|有効期限は?

合格科目の有効期限は設けられていないため、仮に税理士試験を断念しても合格点に届いた科目は生涯有効です。一部の科目に合格した場合は「税理士試験等結果通知書」が郵送されます。

過去の税理士試験で合格している科目があれば、試験の年度と合格済みの科目も記載されているので、証明書を複数枚用意する必要はありません。

5科目に合格したときは「合格証書」が届き、合格発表日に氏名や生年月日、受験番号が官報に掲載されます。

税理士科目合格者の価値は高い

ハローワーク求人データによると、2021年度の有効求人倍率は2.07倍のため売り手市場です。

しかしながら、税理士試験の受験者数は減少傾向にあり、さらに人手不足を招いています。実際、2012年度の全受験者数は48,123人ですが、2022年度は28,853人と10年前のおよそ6割程度です。

年度受験者数
201248,123人
201345,337人
201441,031人
201538,175人
201635,589人
201732,974人
201830,850人
201929,779人
202026,673人
202127,299人
202228,853人

一方、過去に総務省が発表した「サービス産業動向調査」によると、会計事務所の売上高は年々伸びています。

年度売上高
20131兆4549億円
20141兆5067億円
20151兆6650億円
20161兆6275億円
20171兆6514億円

出典:総務省「サービス産業動向調査

ちなみに「令和3年経済サンセス-活動調査」によると、令和3年の会計士事務所の売上高は1兆9,022億円でした。

少子高齢化の影響も重なり会計業界は人手不足ですが、市場規模は伸びているため科目合格者でも価値は高いといえます。実際に1科目~2科目の合格者でも募集している求人も多く、一方で科目合格なしでも採用している事務所もあります。1科目でも合格していれば就職する際に有利です。

税理士科目合格者の平均年収

厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」では、税理士の平均年収は746.6万円です。

働きながら受験する人は、実務を経験しながら試験勉強を通じて知識を得られます。より難易度の高い仕事を任せられる機会も増えるため、収入も高くなるでしょう。

未経験者の場合でも、入社時点で収入を高く設定してくれる事務所もあります。たとえ年収が上がらなくても、科目合格であれば就職には有利だといえます。

必ずしも科目合格数と収入が比例するとはいえないため注意してください。

関連記事:税理士の平均年収は?収入アップをめざす方法8選を税理士所長が解説

税理士科目合格者が評価される場所とは?

税理士の科目合格者が評価される場所は、以下のとおりです。

  • 税理士事務所
  • 一般企業
  • 特定の分野に特化した会計事務所
  • コンサルティング会社

それぞれの企業や事務所で求人の方向性や、業務内容が異なります。ぜひ確認してください。

税理士事務所

税理士事務所では、若手の科目合格者を税理士補助として採用するケースが一般的です。実務経験を積みながら、合格後に税理士としての活躍が期待されます。

求人が増える時期は1年の間に3回あります。

  • 8月:税理士試験終了後
  • 12月:税理士試験の結果発表後
  • 4~6月:繁忙期の終了間際

求人が出される時期によって企業が求める人材が異なります。8月の税理士試験直後は結果が出ていないため、ポテンシャルを重視する採用がほとんどです。一方、12月の募集では、合格者の採用や繁忙期を乗り越えるための人員を確保したい目的から、即戦力人材を求めている可能性があります。

4~6月の繁忙期の終了後は、企業や事務所が採用にかける時間を捻出できるため求人数が再び増加します。ポテンシャル採用と即戦力のいずれも考えられるでしょう。

一般企業

一般企業は会社の規模や社内の体制によって求人の方向性が異なります。

たとえば、会計と税務で部署が分かれている規模の大きな会社もあるため、求人から業務内容が会計と税務のどちらが中心かを確認することが重要です。

自社で決算書類や税務申告書類を作成する企業は、税務知識に深い理解がある人材を必要とします。一方で、税務業務を顧問税理士に一任している会社は、税務の知識に精通している人材の必要性は低いでしょう。

一般企業で勤務を考えている場合は、応募先企業の情報もチェックしてください。

特定の分野に特化した会計事務所

特定の分野や、合格済みの科目に特化している会計事務所を選択するのも1つの方法です。分野に特化した事務所の例を挙げるとすれば、資産税に強い事務所では相続税の知識が必須でしょう。

将来、専門性を高めて独立を考えることもあるかもしれません。キャリアプランや志望する業務に合わせて、受験科目を選ぶのもおすすめです。

コンサルティング会社

コンサルティング会社では、M&AやIPOなどを中心に高度な税務知識をもつ人材が求められます。高齢者の増加にともない相続や事業継承の案件も増えており、関連知識をもつコンサルタントも需要があります。

一般的な税務知識にくわえて、コンサルティングに必要な専門性や企画力があると採用の確率も高まるでしょう。

コンサルティングの分野によって業務内容は異なるため、比較しながら検討することをおすすめします。

実務未経験でも採用される?税理士科目合格者の求人事情

実務未経験でも採用されるケースはあります。科目合格なしでも、税理士に関連する資格を所持していれば採用の確率も高まります。

他にも、選考で有利な科目や、科目合格なし・未経験の給与水準を紹介します。

一般企業への就職・転職で有利な税理士科目は?

企業の特徴やクライアントに合った科目を選ぶと、実務経験がなくても採用の確率が上がるでしょう。たとえば必須科目である簿記論・財務諸表論に合格していると、一般企業の経理部や会計事務所で即戦力として評価されます。

確定申告を担う事務所では、所得税法か法人税法に合格していると重宝されます。消費税は生活と関わる機会も多く、個人事業主や中小企業とメインで仕事をする会社では消費税法の知識があると有利です。

相続税法も事業継承分野でニーズがあり、実務で活かせます。ただし、試験の難易度も高いため慎重に検討しましょう。

科目合格なし・未経験の給与水準

科目合格が無い場合の平均給与は一般的に300万円前後です。1科目合格の平均年収は約370万円のため、ある程度の差は生じます。採用面に関しては業界の人手不足も重なり、若手人材であれば税理士試験の勉強中だと科目合格なしでも採用されるケースがあります。

また、未経験で科目合格なしでも税理士に関連する資格を持っている場合は有利です。たとえば、簿記二級を取得しているかを採用の判断基準とする事務所も多く、簿記1級を取得していれば優遇されるでしょう。

中小企業診断士や社会保険労務士も評価されやすい資格の一つです。

税理士科目合格者がより市場価値を高めるには?

科目合格者が転職や就職活動、キャリアアップなどでさらに自身の市場価値を高める方法は、主に2つあります。

  • 勉強を続けて税理士を目指す
  • 他分野の経験やスキルを組み合わせる

それぞれ紹介します。

勉強を続けて税理士を目指す

税理士と同等の知識や実務経験を積んでも、税理士登録しなければ独占業務はできません。税理士試験に合格して登録すると独占業務にも携われるので、仕事の幅が広がり年収もアップします。

また、税理士として名乗れるため社会的評価も高まります。個人の価値やスキルを高めるには、勉強を続けて税理士試験合格を目指しましょう。

他分野の経験やスキルを組み合わせる

会計や税務の知識以外に、他分野の経験を組み合わせても将来性を高めることに繋がります。たとえば、グローバル化の流れにともない、海外と取引を行う企業や個人が相手の場合、他国の言語だけではなく国際税務に関する知識が必要です。

また、事業継承やM&Aはニーズがあり、深い理解がある人材は重宝されます。時代の流れをくみとり、知識を取り入れ続けることが自身の専門性を高めるために不可欠です。

税理士科目合格者が就職・転職を成功させる3つのポイント

科目合格者が就職・転職を成功させるポイントは、3つあります。

  • 転職を希望する事務所を十分にリサーチする
  • 実務と勉強時間を両立できる事務所を選ぶ
  • 5科目一発合格よりも毎年1科目以上合格することを目指す

事務所の選び方も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

転職を希望する事務所を十分にリサーチする

一口に会計事務所、税理士事務所と言っても、クライアントによって業務内容はさまざまです。そのため、自分がやりたい業務と求められている仕事をきちんと理解することがミスマッチを防ぎます。

就職先を選ぶときは、以下の項目を重視しましょう。

  • 待遇
  • 仕事内容
  • 働きがい
  • 成長
  • 人間関係

今後のキャリアを見据えて転職先を選ぶと、実務として学びながら合格を目指せるのでおすすめです。応募する企業の情報は入念にリサーチしましょう。

実務と勉強時間を両立できる事務所を選ぶ

残業や休日出勤が多かったり、日々の業務が多忙すぎると試験勉強の時間が取れません。そのため、残業時間がなるべく少ない事務所を選ぶのが得策です。科目合格者の段階で働きながら実務経験を積み、試験勉強をするのもおすすめです。

また、試験に対して理解のある事務所を選ぶとよいでしょう。なかには、試験の直前期に有給休暇を取らせてもらえたり、試験日と直前の3日は試験休暇を設けていたりする事務所もあります。

職場に合格を目指す仲間がいれば、励ましあいながら勉強にも取り組めます。試験と実務を両立できるかどうかで事務所を選ぶのも大切です。

関連記事:税理士登録に必要な実務経験はどこで積む?業務の具体例も解説

5科目一発合格よりも毎年1科目以上の合格を目指す

働きながら勉強する場合は、1年で1科目〜2科目の合格を目指すとよいでしょう。税理士試験は科目合格制が適用されているため、1度の試験で5科目すべてに合格する必要はありません。

1年で1科目合格のペースであれば5年はかかります。科目合格制を活かし、毎年計画を立ててコツコツと勉強することが重要です。

関連記事:税理士試験の5科目一発合格は難しい!最短合格を目指す6つのコツ

税理士の科目合格制度で税理士試験合格を目指そう

税理士試験は科目合格制度が採用されているため、働きながらでも着実に合格を目指せます。一方、科目によって合格率・難易度が異なるため、受験科目は慎重に選びましょう。理想とするキャリアプランや、やりたい業務で科目を選ぶのも1つの方法です。

また、合格科目数が増えると業務の幅が広がるため年収もアップする傾向にあります。本記事を参考に、科目合格制度で税理士試験合格を目指しましょう。

ウィズ総合事務所グループは税理士・社労士等の士業資格や簿記等の経理系の資格取得を目指している方を積極的に採用しています。

当事務所では資格取得に向けて全国でもトップクラスの支援制度を設けています。

一定の要件はありますが、教材費は事業者が全額負担しますし、最大2ヶ月間試験勉強に専念できる制度があります。
また、平常時においても1日6時間、週30時間を標準勤務時間としており、勉強、家庭、仕事のバランスがとりやすいように配慮しています。

働きながら勉強することは資格勉強にも相乗効果を生みます。

働きながら資格の取得を目指したい方は、ぜひウィズ総合事務所グループの採用の詳細をご確認いただき、よろしければご応募ください。

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この記事の監修者

ウィズ総合事務所グループ統括代表 山本庸介

  • 大阪大学薬学部、同大学院薬学研究科卒業
  • 慶応大学経済学部卒業(通信教育課程)
  • 大手製薬会社に勤務後、税理士を志す
  • 2021年7月に大野市で山本総合会計事務所を開業
  • 2023年9月に税理士法人ウィズ総合事務所を設立

税理士試験に2年で5科目合格(簿財消相法)。開業2年でグループ売上1億円に達する。

従業員が資格を取得しやすい制度・環境を構築し、本事務所を運営。事業者のお客様に対しては、本業に集中できるよう、「事務代行屋」として支援を行う。

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