税理士登録に必要な実務経験はどこで積む?登録要件と証明方法も解説
公開日: 2023年7月18日
更新日: 2024年10月22日
税理士になるためには、試験に合格したうえで2年間の実務経験が必要となります。しかし、実際に税理士になるためにはどのような実務経験を積めば良いのかよくわからないという方もいるでしょう。
実務経験がないと税理士にはなれません
本記事では、税理士に必要な実務経験の種類とおすすめの事業所について詳しく解説します。実務経験2年間の計算方法や申請に必要な在籍証明書の発行についても解説しています。これから税理士を目指す方は、ぜひ最後までご覧ください。
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税理士登録には実務経験が必要
原則、税理士になるためには、通算2年以上の実務経験を積む必要があると定められています。
税理士法第3条によると、税理士登録に必要な条件は以下のとおりです。
参照:e-Gov法令検索「税理士法」
- 税理士試験に合格し、通算2年以上の実務経験を積む
- 税理士試験を免除され、通算2年以上の実務経験を積む
- 弁護士の資格を有する
- 公認会計士の資格を有する
例外として、弁護士や公認会計士の資格を有している場合、税理士登録に実務経験は不要です。そのため、これから税理士を目指す方は、2年間の実務経験が必要であることを理解しておきましょう。
税理士の実務経験に認められる業務【具体例】
では、税理士になるための実務経験としてはどのような業務が認められるのでしょうか。具体例を交えて解説していきます。
実務経験に含まれる業務
税理士法施行令では、税理士に必要な実務経験に含まれる業務を「貸借対照勘定及び損益勘定を設けて経理する会計に関する事務」としています。
貸借対照勘定及び損益勘定を設けて経理する会計に関する事務とは
具体的には、以下の7つが該当します。
参照:e-Gov法令検索「税理士法」
- 簿記上の取引について、簿記の原則に従い取引仕訳を行う事務
- 仕訳帳等から各勘定への転記事務
- 元帳を整理し、日計表又は月計表を作成して、その記録の正否を判断する事務
- 決算手続に関する事務
- 財務諸表の作成に関する事務
- 帳簿組織を立案し、又は原始記録と帳簿記入の事項とを照合点検する事務
- 税務官公署における事務のほか、その他の官公署及び会社等における税務又は会計に関する事務
例えば、財務諸表(貸借対照表、損益計算書など)の作成や会計帳簿(仕訳帳、現金出納帳など)の記帳代行は実務経験に含まれる業務です。
実務経験に含まれない業務
税理士登録に必要な実務経験に含まれない業務とは、簿記会計の専門知識を必要としない業務のことを指します。たとえば、「電卓での単純計算」や「経費の入出力」などは実務経験に含まない業務です。
また、実務経験に該当する業務であっても、残業(時間外勤務)は実務経験の時間に含まれません。そのため、原則として通常の勤務時間のみをカウントして実務経験を積む必要があります。
税理士の実務経験はどこで積める?
税理士に必要な実務経験を積める職場は、おもに以下の3つです。
- 税理士事務所・税理士法人
- 一般企業の経理部門
- 税務署(国税専門官として)
それぞれ詳しく解説します。
税理士事務所・税理士法人・市役所の税務課
税理士を目指す場合、税理士事務所や税理士法人で実務経験を積むことが多いです。また、市役所の税務課のケースもあります。
一般的に税理士事務所(又は会計事務所)とは、企業や個人向けに税務や会計関係のサービスを提供する事務所のことを指します。税理士法人とは、法人格を有した税理士事務所のことを指します。税理士事務所では税理士の補助として働くことになるため、実践的な知識やスキルが身に付きやすいです。
ちなみに、税理士事務所や税理士法人にはパート・アルバイトなどの求人もあります。実務経験の条件に満たないこともありますが、非正規雇用でも実績を積むことができます。
一般企業の経理部門
一般企業の経理部門でも、税理士としての実務経験を積めます。
経理部門は、企業のお金や取引の流れを管理する役割があり、税理士の実務経験に該当する業務が多いです。そのため、経理部門に勤める方が将来のキャリアアップを見据え、税理士を目指すパターンも少なくありません。
ただし、経理業務の中でも簿記会計に関する知識を必要としない単純作業(電卓計算や入力作業など)は実務経験としてカウントされません。
実務経験は、租税や会計に関する業務を行った期間で2年を計算する必要があります。
関連記事:経理の仕事内容とは?一日のスケジュール例や業務の流れを解説
税務署の国税専門官(国家公務員として)
税務署で国税専門官として働く場合も、税理士の実務経験に含まれます。国税専門官とは、税金が正しく収められているかを調査し、不正の指導をおこなう国家公務員のことです。
税理士事務所と同様に、税務署でも会計や税務に関するプロと一緒に働けるため、実践的な知識やスキルが身に付きやすいです。また、税務署での勤務が一定期間を超える場合、税理士試験の全部または一部の試験科目が免除されます。
具体的な免除科目は以下の表のとおりです。
税理士の試験科目は大別すると「税法」と「会計」の2種類であるため、税務署に23年または28年以上勤務すれば試験なしで税理士になれます。。
税理士の実務経験2年の計算方法
ここからは、実際に税理士に必要な実務経験(2年間)の計算方法について解説します。実務経験期間を計算するうえで、下記の2点に注意が必要です。
- 同一の勤務先である必要はない
- 税理士試験合格前も含まれる
それぞれ説明していきます。
同一の勤務先である必要はない
税理士になるために必要な2年以上の実務経験は、同じ勤務先でなくても構いません。勤務先が違っても、実務経験の期間がトータルで2年以上となれば認められます。
たとえば、以下のような順番・時系列で勤務しているケースは税理士事務所AとBで合計2年間勤務しているため、2年の実務経験が認められます。
- A税理士事務所で1年間勤務
- A税理士事務所を退職後6ヶ月の期間をあけ、B税理士事務所で1年間勤務
ただし、計算期間に含むすべての勤務先で実務の証明書類となる「在籍証明書」が必要です。「在籍証明書」については、後ほど詳しく解説します。
税理士試験合格前も含まれる
税理士試験の合格前に実務経験がある場合、その期間も2年の実務経験に含まれます。そのため、試験に合格してから実務経験を積むケースより、実際に働きながら試験勉強をするケースが多いです。
試験に合格したらすぐに税理士として働けるように、実務経験を積みながらの勉強をおすすめします。また、税理士試験前の勤務についても「在籍証明書」が必要です。
税理士の実務経験を証明する「在籍証明書」とは
税理士登録に必要な実務経験の証明には、「在籍証明書」が必要になります。在籍証明書とは、従業員がこれまでにその企業で勤務していたことを証明する書類のことです。
税理士に必要な在籍証明書は、税理士事務所や一般企業の経理部門などに依頼して作成してもらう必要があります。ただし、在籍証明書の作成に関する注意点として以下の2つが挙げられます。
- 在籍証明書の発行は時間がかかることがある
- 複数の事業所で実務経験がある場合は、すべての事業所の在籍証明書が必要となる
税理士試験合格後、スムーズに税理士登録をするためには、これまでに勤務してきた事務所にそれぞれ早めに作成依頼をする必要があるのです。
関連記事:税理士登録に必要なこと|実務経験や登録費用、面接について一挙解説
税理士の実務経験を証明する「在籍証明書」を取得する際の注意点
税理士の実務経験を証明する在籍証明書を取得する際には、いくつか注意点があります。
- 一般企業に勤務していた場合
- 非正規雇用(アルバイト・パート)で勤務していた場合
- 在籍証明書がもらえないときの対処法
それぞれ解説します。
一般企業に勤務していた場合
一般企業での実務経験がある場合、在籍証明書だけでなく「職務概要説明書」の提出が必要です。
日本税理士連合会によると、職務概要説明書は「税理士としての実務経験について確認するうえで、在職証明書だけで判断できないときに必要となる書類」とされています。
参照:日本税理士連合会「登録に必要な提出書類等」
企業の代表者は、従業員の業務内容や業務に占める会計業務の割合を詳しく記載し、在籍証明書に使用した印鑑で押印する必要があるのです。
また、税理士事務所とは違い、一般企業では実務経験に該当する項目以外の業務を行うことがあります。そのため、職務概要説明書では上記に加えて所属した企業の組織図の提出も求められます。
非正規雇用(アルバイト・パート)で勤務していた場合
アルバイト・パートで税理士の実務経験を積んだ場合、実務に該当する業務を証明するために「勤務時間の積み上げ計算書」が必要になります。
なぜなら、非正規雇用の職員は正社員と比較して勤務時間が短く、在籍期間=経験年数として計算されないからです。
日本税理士連合会によると、勤務時間の積み上げ計算書とは、「正規の正社員よりも勤務時間が短い場合に勤務時間が実務経験に必要となる期間を満たしているかを確認する書類」とされています。
参照:日本税理士連合会「登録に必要な提出書類等」
勤務時間の積み上げ計算書を提出した場合、在籍期間にかかわらず2年相当の勤務時間を獲得していると証明すれば、実務経験2年以上として認められます。
在籍証明書がもらえないときの対処法
何らかの原因で在籍証明書がもらえない場合は、登録先の税理士会に相談しましょう。いかなる理由でも税理士登録には在籍証明書が必要だからです。在籍証明書がもらえないケースとしては、以下のようなケースがあります。
- 円満退職ではなかったため、退職済みの職場に依頼しにくい
- 開業税理士事務所で勤務している場合、同業者を増やしたくない理由で断られる
- 税理士事務所で勤務している場合、税理士登録をすることで人件費が上がる可能性があるため断られる
このように、在籍証明書の取得で職場とのトラブルが生じることもあるのが現状です。万が一のトラブルに備え、勤務先の税理士事務所からもらった給与明細や源泉徴収票は必ず保管しておきましょう。
【ジャンル別】税理士の転職に有利な実務経験
税理士に必要な実務経験を積むためには、実践的なスキルが身につきやすい税理士事務所で働くことがおすすめです。税理士事務所にはそれぞれの特徴があるため、ここでは税理士の転職に有利な実務経験を紹介します。
- 一般的な税理士事務所への転職
- 国際税に特化した税理士事務所への転職
- 資産税に特化した税理士事務所への転職
- コンサルティング中心の税理士事務所への転職
一つずつ詳しく解説します。
一般的な税理士事務所への転職
一般的な税理士事務所に転職したい場合は、会計や経理、税金などに関する幅広い実務経験を積むことが大切です。
税理士事務所では以下のように税金や会計に関する幅広い業務を担っています。
- 法人の決算
- 税金に関する相談
- 相続、事業承継のコンサルティング
- 税務の書類作成代行(確定申告書、青色申告承認申請書、相続税申告書など)
- 税務代理(年末調整、確定申告代行など)
- 税務調査等の税務署とのやり取り
税理士の実務に必要な知識を身に着け、さまざまな業種の顧客と接することが求められるでしょう。
ただし、税理士事務所ごとに特色の異なる部分があり、会計ソフトの違いや記帳方法、対応分野などの働き方もそれぞれ異なります。一般的な税理士事務所に転職したい場合、まずは自分が興味関心のある業務や得意分野、将来像を明確にしてから転職先を決めましょう。
国際税に特化した税理士事務所への転職
国際税に特化した税理士事務所への転職では、語学力が求められます。
国際税務では、国内外の法人や個人同士が取引を行う際、各国の税制に従って会計処理などを行います。実際に、国内企業が国境をまたいで事業展開するケースや、海外の事業主が日本に進出するケースも増えており、国際税務が行える税理士の需要が高まっているのです。
グローバル企業が対象となることが多いため、外資系企業における実務経験があると転職において有利でしょう。また、現地の租税や租税条約、移転価格税制などの専門知識も欠かせません。そのため、現地の税制に詳しいメンバーファームとの連携やコミュニケーションが重要になります。
資産税に特化した税理士事務所への転職
資産税に特化した税理士事務所で働く場合、資産運用や譲渡所得などの資産税に関する知識が求められます。
資産税とは、資産の保有や取得、売却で生じる利益に課税される税金のことです。具体的には、相続税や贈与税、譲渡所得にかかる所得税などが資産税にあたります。
近年は少子高齢化や相続などの影響から、資産税に特化した税理士事務所の需要が高まっていると言えます。
日本だけでなく海外不動産に投資する富裕層も増えているため、海外の法律や税制度の知識があると、転職の際に有利に働くでしょう。
コンサルティング中心の税理士事務所への転職
コンサルティング中心の税理士事務所では、事業の特徴を十分に分析する力や、M&Aや不動産経営に関する実務経験があると有利でしょう。
税理士は企業の経営者や社長と接する機会が多く、税金に関する相談を受けたいという需要が高くなっています。
実際に、コンサルティング中心の税理士事務所が行っている業務の一部は以下のとおりです。
- 経営コンサルティング
- M&Aなどの組織再編や事業継承に関するコンサルティング
- 医業、飲食業、不動産業など業種特化したコンサルティング
税金のプロという立場から、税理士が顧客に合わせて適切な助言を行い、企業の財務状況や経営における課題、節税などに関するアドバイスを行うことが求められます。
実務経験を積んで税理士業務に活かそう
原則、税理士として登録するためには、2年間の実務経験(簿記会計に関する知識を必要としない単純作業を除く)が必要です。
税理士になるための受験勉強しながらでは、実務経験が積めないと不安になる方もいるかもしれません。
しかし、実際のところ、税理士事務所や一般企業の経理部門で働きながら試験勉強をするケースが多く、受験前に必要な実務期間を満たしていることもあります。
これから税理士を目指す方は、自分が興味関心のある業務や将来像を明確にしてから就職先を決め、学んだ知見を今後の実務に活かせるように勉強していきましょう。
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一定の要件はありますが、教材費は事業者が全額負担しますし、最大2か月間試験勉強に専念できる制度があります。
また、平常時においても1日6時間、週30時間を標準勤務時間としており、勉強、家庭、仕事のバランスがとりやすいように配慮しています。
働きながら勉強することは資格勉強にも相乗効果を生みます。
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この記事の監修者
ウィズ総合事務所グループ統括代表 山本庸介
- 大阪大学薬学部、同大学院薬学研究科卒業
- 慶応大学経済学部卒業(通信教育課程)
- 大手製薬会社に勤務後、税理士を志す
- 2021年7月に大野市で山本総合会計事務所を開業
- 2023年9月に税理士法人ウィズ総合事務所を設立
税理士試験に2年で5科目合格(簿財消相法)。開業2年でグループ売上1億円に達する。
従業員が資格を取得しやすい制度・環境を構築し、本事務所を運営。事業者のお客様に対しては、本業に集中できるよう、「事務代行屋」として支援を行う。
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